帝国データバンクが、2022年度の放課後等デイサービスの倒産件数が過去最多になったと報告しました。
放デイの市場が調査の対象となるくらい大きくなってきたとわかる一方で、
「うちの子が通っている事業所は潰れることはないのかな…」
と現実的に気になる親御さんも多いことでしょう。
しかも、実際に放デイが潰れるとなると、通っている子どもと親からみれば、日常生活を一変させる大問題です。
そこで、今回の記事では、放デイが潰れる原因と親として子どもにできること3つを詳しく解説していきます。
放デイに子どもを預ける親として、これからどのように放デイと付き合っていくべきなのかを考えるきっかけにしてみてください。
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放課後等デイサービスが潰れるって本当?【2022年は過去最多】
帝国バンクデータの調査(2023年)によると、放課後等デイサービスの倒産が急増し、2022年は前年(6件)の2倍以上となる14件と過去最多となったことが明らかにされました。
2014年からの倒産件数の推移としては、以下の通りです。
2012年の児童福祉法改正により設置された放デイですが、10年目にして一番多い倒産件数であることがわかります。
ただし、厚生労働省の報告では、2021年3月時点における放デイの事業所数は、16,718とされています。そのため、2022年は約17,000事業所あると仮定すると、そのうち14件(約0.08%)しか倒産していないという見方もできます。
ちなみに、Twitterでも放デイが潰れたと、つぶやく保護者がいるようです。
通っていた放デイが閉所になるので、他の区のデイに空きが無いか問い合わせたのだけど、厳しい状況💦
— ふわふわまくら (@8hnetai) August 23, 2020
放デイの経営って大変なんだろうな…でも通いたい子はきっと今たくさんいるよね💦安全で安心な放課後の居場所欲しいよね😢
障害児の親として何か出来ることはないものか…
通ってる放デイが急に閉鎖が決まったの… どうしたらいいんだ。
— ゆうか🍺 (@yuuuka5000) February 1, 2023
急に通っている放デイが潰れてしまうと、親としてはかなり困ってしまいますよね。
記事の後半で、潰れてしまった時の流れや対策もお伝えします。
このように、徐々に潰れる放デイがちらほら出てきていることがお分かりいただけるでしょう。
放課後等デイサービスが潰れる原因とは?
帝国データバンクの調査(2023年)では、放課後等デイサービスが潰れる原因を紹介しているので確認していきましょう。
以下のグラフをご覧ください。
倒産原因の上位3つとしては、以下のようになります。
- 利用者の低迷(34.5%)
- 法令違反(31.0%)
- 職員確保難(20.7%)
それぞれの原因を深掘りして解説します。
利用者の低迷
2023年時点では、約17,000の事業所があると推測され、地域によって利用者集めの激戦区となる場合もあります。
また、評判が良くない事業所は自然淘汰され、利用者が徐々に離れていくこともあるでしょう。
結果的に、利用者の低迷が倒産原因の1位にあがったと言えるでしょう。
法令違反
近年、法令違反による行政処分を受ける放デイは年々増加傾向にあります。
東京都世田谷区など都内で7カ所の放課後デイと幼児対象の児童発達支援サービスが昨年10月末、一斉に営業を終了した。それぞれの施設を利用していた子どもは、ほかに移らざるをえなくなった。
引用:https://www.asahi.com/articles/ASP3832QSP31UTFL009.html(2021年3月8日朝日新聞デジタル)
秋田市は障害のある子どもたちを放課後などに預かる施設を運営している3つの事業所が、合わせて3400万円余りの給付費を不正に受け取っていたとして、25日付けで来月から3か月間、新規の利用者の受け入れを停止するなどの行政処分を行いました。
引用:NHK 秋田 NEWS WEB(2022年8月25日)
障害がある子どもを放課後などに預かる伊達市のデイサービス施設が、職員配置に関する法律の基準を満たしていなかったことがわかり、県は、給付金1500万円余りを不正に受け取っていたとして、この施設の事業者指定を3か月間停止する行政処分を行いました。
引用:NHK 福島 NEWS WEB(2023年2月13日)
上記の法令違反はほんの氷山の一角で、ここでは紹介しきれないほどの行政処分を受けている放デイが山ほどあります。
このように、昨今増えてきている水増し請求のほか、不適切な職員配置などで行政処分を受けた「法令違反」によるものが倒産原因の2位になりました。
職員確保難
児童福祉法では、一般的な放デイは、10人の利用者に対して、管理者兼児童発達支援管理責任者1名、保育士または児童指導員2名以上が必須の人員配置となっています。
しかし、放デイの数が増えてくると、職員の確保が十分にできなくなります。
不適切な職員配置のままだと、事業所運営は認められません。
結果的に、職員がなかなか定着しない放デイは倒産することになります。
このように、職員確保ができなかったことによる倒産原因が3位にあがりました。
深刻な児発管不足も放課後等デイサービスが潰れる原因に
さらに、放課後等デイサービスに必ず1名配置しなくてはいけない児童発達支援管理責任者(以下、児発管)の人手不足が深刻になりつつあります。
先ほども述べたように、年々放デイの事業所数が増えてきていますが、児発管がいなければ開所すらできません。
2023年時点の制度では、基礎研修を受講後2年間のOJTを受けて、さらに実践研修を受けた者のみ、児発管としての事業所登録ができる仕組みとなっています。
茨城県つくば市で放デイの立ち上げ準備中。だけど児発管がなかなか見つからない💦PECSを取り入れた療育をしたいのですが、どなたか事業所の立ち上げからやってみたい方いませんか?もともと近くでPECSを教えてくれる所がなかったので自分で作ろうと思ったけど、なかなか苦戦中です🥲
— Tomoe Kobayashi (@tomoehappysmile) February 17, 2023
2022年から児発管不足のツイートがかなり増えました。
これからも、しばらくは児発管不足が続くと思われます。
これからのオープンする放デイはもちろん大変です。
しかし、現在運営している放デイでもし児発管が退職したら、それだけで運営ができなくなってしまう可能性があります。
物価高で実質賃金が上がらない近年に日本経済を踏まえると、高い給料を求めて、児発管が流動的になるのは間違いありません。
十分な人件費をさかない放デイでは児発管がどんどん退職し、最終的に潰れる放デイが増えていくことでしょう。
2024年の法改正で潰れる放課後等デイサービスはさらに増える
2024年4月の児童福祉法の改正に伴い、放課後等デイサービスは以下の2種類に分類される見通しです。
- 総合支援型
- 特定プログラム特化型
総合支援型は、生活能力の向上や創作活動の実施、余暇の提供などを提供する放デイになります。
また、特定プログラム特化型は、理学療法や作業療法など専門性の高い支援を提供する放デイになります。
一方で、以下のような放デイは公費から外され、潰れる可能性が高くなります。
- ただ預かってテレビを見させているだけ
- ゲームやタブレットさせているだけ
- 塾のように勉強だけ教えているだけ
- ピアノやダンスだけ教えているだけ
簡単にいうと、
「預かるだけなら発達支援とは言えない。税金を使う意味がないよね。」
「勉強やピアノだけ教えるなら、習い事で良いよね。税金使う必要がないよね。」
ということです。
このように、2024年度以降の法制度の改正より、潰れる放デイが出てくることが予想されます。
記事の冒頭で、2022年の倒産件数はたったの14件(過去最多)だと解釈もできますが、これからはどんどん増えていくことが簡単に予想できますね。
放課後等デイサービスが潰れると子どもはどうなる?
さて、放課後等デイサービスが潰れると、そこに通っている子どもたちはどのようになってしまうのでしょうか?
数ヶ月後に閉所することを保護者に伝える「計画的な閉所」もあれば、明日からいきなり閉所するような「突発的な閉所」もあります。
いずれにしても、放デイをお子さんに居場所として利用したいなら、すぐに別の放デイを探さなくてはいけません。
「計画的な閉所」の場合は、放デイ側が別の事業所を紹介してくれたり、相談員が探してくれたりします。
もちろん、親自身が放デイを探しても構いません。
一方で、「突発的な閉所」の場合は、子どもの放課後の居場所がすでにないわけですから、親は仕事を休んで子どもの面倒を見る必要が出てくるでしょう。
同時に、急いで放デイを探す必要があります。
このように、放デイが潰れたら子どもだけではなく、親も慌ただしい日常になってしまうことは避けられないでしょう。
どんな放課後等デイサービスが潰れる可能性がある?
ここで、潰れやすい放課後等デイサービスの特徴を5つ紹介します。
いわゆる「ダメな放課後等デイサービス」とも言えますが、お子さんが通っている事業所を思い浮かべながらご覧になってください。
- 虐待がある
- スタッフの入れ替わりが激しい
- 施設内が汚い
- 怪我や忘れ物の報告がない
- 研修をしていない
詳しくは、こちらの別記事で紹介しているので、参考にしてみてください。
昨今の業界事情を踏まえると、「スタッフの入れ替わりが激しい」は、わかりやすく「潰れるサイン」と言えます。
保護者が常に放デイ中に入って監視していない以上、虐待や施設の乱雑さは、ブラックボックス状態です。
内部告発でも起きない以上は、保護者にはまったくわかりません。
その点、近年急激に増え続ける放デイによる人材不足と2024年の法改正による質の悪い事業所の自然淘汰により、おのずと事業所運営ができなくなるでしょう。
したがって、「スタッフの入れ替わりが激しい」のは、事業所にブラック体質など何らかの原因が根強く残っているわかりやすい証拠です。
1年以内に辞めるスタッフが多い放デイ、毎年、3、4人と辞めていく放デイは、かなり怪しいです。
今お子さんが通っている事業所のスタッフの入れ替わり頻度を確認しておくと良いでしょう。
ブラックな放デイは、そこで過ごす子どもも職員も幸せになれないので、いずれ手を引くことを念頭に置いておきましょう。
【今からできる3つのこと】放課後等デイサービスが潰れる時の対策
仮に、明日から放課後等デイサービスが潰れるとなったら、子どもも親も大混乱になってしまいます。
自分の子どもが通っている事業所が潰れるかもしれないと感じたら、以下の3つの対策を打っておくことをおすすめします。
- 複数の放デイを使うこと
- 放デイ以外の過ごし方を考えること
- 放デイに依存しない子育てを考えること
それぞれの対策を詳しく解説します。
対策①複数の放デイを使うこと
1つ目の対策は、複数の放デイを利用することです。
なぜなら、使っている放デイが潰れたら、お子さんの行き場が一瞬でなくなってしまうからです。
そこで、2つ以上の放デイを使うことで、潰れるリスクを分散できます。
仮に、2つの事業所を併用していたとして、片方が潰れてももう片方の事業所を臨時利用しているうちに、新しい放デイを探すことができるでしょう。
ちなみに、複数の放デイを利用するメリットもあります。
子どもの成長に合わせて、小学校・中学校・高校と居場所が変わるように、ライフステージや発達段階に応じて、放デイを変えるのが自然な利用の仕方です。
あらかじめ、放デイを併用しておけば、いざ放デイを乗り換える時に新しく事業所を探す必要はありません。
対策②放デイ以外の過ごし方を考えること
2つ目の対策は、放デイ以外の過ごし方を考えることです。
突然ですが、放課後を放デイでしか過ごせないのは、本当に子どもの自立になっていると思いますか?
放デイでしか過ごしていないと、他のお子さんが普通に経験していることを経験できなくなってしまう、いわば「体験格差」を生み出しかねません。
例えば、学童や児童館で過ごしたり、少しずつ留守番の練習をしたり、発達障害のお子さんの個性を活かす習い事に挑戦したりなど…。
放デイ以外で過ごす経験もとても貴重だと言えます。
下記の記事では、発達障害のお子さんにおすすめの習い事を紹介していますので、お時間があれば読んでみてください。
対策③放デイに依存しない子育てを考えること
3つ目の対策は、放デイに依存しない子育てを考えることです。
放デイは療育の専門家が子どもに関わってくれるだけではなく、親にもアドバイスを与えてくれます。
ですが、時々、勉強や困りごとを放デイに丸投げする親もいるので、それは子育てとしてはあまり望ましくありません。
アドバイスは受けつつも、発達障害のある我が子を深く理解するために、親自身が本を読んで積極的に勉強していく必要があるでしょう。
まとめ:放課後等デイサービスが潰れる可能性はどんどん高くなる
放課後等デイサービスは、その数が増え始め、法改正も進むことから、質の悪い事業所はどんどん淘汰されていきます。
放デイが潰れると、今通っている子どもとその親が困るため、「いつか潰れるかもしれない」と思っている方が、逆に安心することができるでしょう。
潰れるかもしれないリスクに備えるために、今からできる対策はいくらでもあります
「自分のところだけは大丈夫」と思い込まず、お子さんのより良い成長のために、子育てを考え直すきっかけにしてみてください。
たった14件しか潰れてないと思われるかもしれませんが、これから潰れる放等デイがどんどん増えることが予想されます。
詳しくは、記事の後半で解説します。