発達障害の診断を受けているお子さんを育てている親御さんの中には、こんな悩みを抱えている方はいませんか?
- 外ではいい子しているのに、家で癇癪(かんしゃく)を起こすなんて、甘えてるんじゃないのか?
- しつけがなっていないから、親の前でわがままになっているのではないか?
- 子どもの言いなりになるのは良くないし、かといってどうしたら良いのか…。
「いい加減にしなさい!」とイタズラに怒鳴るのも良くないと思いつつ、
かと言って、子どもの要求に「はいはい」と言いなりになるのも良くないと感じておられますよね。
一見、わがままに見える行動ですが、実は「外でいい子、家で癇癪」なお子さんのことをより深く理解できる良いチャンスです。
本記事では、家で癇癪が起こる理由とその対策をそれぞれ5つ解説しています。
すぐにできる方法もあれば、お子さんとよく話し合わないとできない方法もあります。
ご自分のお子さんの特徴や特性を踏まえながら、最後まで記事をご覧になってください。
理由と対策をお伝えするものの、結局は自分のお子さんがなぜ癇癪を起こすのか、その原因を親御さん自身で探らないと根本解決にはなりません。
お子さんの癇癪を考えるきっかけとして、本記事を参考していただけると嬉しいです!
Table of Contents
外ではいい子なのに家で癇癪が起きるのは、子どもが無理してるサインです
この記事を読んでいる親御さんに一番最初に考えて欲しいことは、「発達障害であろうとなかろうと、ただ単に子どものわがままだと捉えてないでほしい」ということです。
家で感情を爆発させているのは、どこかで無理をしている証拠です。
そうでないと、わざわざエネルギーを浪費する癇癪を何度もする理由がありません。
例えば、怖い学校の先生に注意されないように、良い子を演じているものの、我慢しすぎてストレスが溜まっている可能性があります。
学校で溜めたストレスはどこかで発散しないといけないわけですから、たまたま「家で癇癪を起こす」という形で発散しているわけになります。
必ずしも、家で癇癪を起こすとは限りません。学校と親の前では良い子でも、学童保育や放課後等デイサービスで大暴れする子もいますよ。
なぜ、学校や親の前で良い子を演じるのか?その背景を考える必要があります。
子どもが家で感情を爆発させている背景がわかったとしたら、「いい加減にしなさい!」と叱るより、もっと別にやることがあるはずですよね。
まずは、どうして家で癇癪が起きるのか?その理由を5つ紹介していきますので、一緒に確認していきましょう。
外ではいい子なのに家で癇癪が起こる理由①注意されることが多い
1つ目の理由は、注意されることが多いことです。
発達障害の特性によって、周りの大人から注意されることが多いと、我慢してストレスが溜まる原因があります。
発達障害への理解が広まりつつありますが、まだまだ特性に配慮した支援がなされていない実情があります。
特にADHDのお子さんは、衝動性ゆえに何度も同じことを注意されがちです。
誰だって、何度も同じ注意はされたくありません。
「また同じことで怒られた…」と子どもの行動はどんどん萎縮してしまいます。
外では怒られないように我慢してもストレスが溜まり、結果的に子どもは家で癇癪を起こすことが多くなるのです。
外ではいい子なのに家で癇癪が起こる理由②ストレス耐性が弱い
2つ目の理由は、ストレス耐性が弱いことです。
発達障害のお子さんに多いのですが、特性ゆえに周りの環境に適応するのが苦手で、ストレスに耐える気持ちの余裕がないことがあります。
発達障害のお子さんであれば、一度は知能検査のWISC(ウィスク)を受けたことがありますよね?
WISC検査の下位項目の「ワーキングメモリ」が低いと、ストレス耐性が弱い傾向にあります。
特に、ADHDのお子さんはだいたいワーキングメモリの数値が低く、ストレスが溜まりやすい傾向にあるのです。
そのため、大人から見るとささいなことでも、ストレスがものすごく溜まり、家で癇癪が起こっているケースもあります。
外ではいい子なのに家で癇癪が起こる理由③自分の気持ちをうまく表現できない
3つ目の理由は、自分の気持ちをうまく言葉で表現できないことです。
どんな子どもでも、家の外で過ごしていたら、多かれ少なかれストレスが溜まり我慢することがあります。
ですが、家に帰ってきて、「お母さん!今日、学校で先生にこんなことで怒られた!」など報告することで、
「まあ、それは大変だったわね。でも、きちんと謝れたの?偉いわ。次は、同じことしないように気をつけないとね。」
などと、親子で対話をすることで、モヤモヤした子ども気持ちは和らぎます。
ですが、語彙力がない子どもは、外で起こったエピソードをうまく言葉で親に伝えることができません。
そのため、モヤモヤだけ募り、結果的に癇癪という形で爆発することが多いのです。
外ではいい子なのに家で癇癪が起こる理由④ストレスの対処方法を知らない
4つ目の理由は、ストレスの対処方法を知らないことです。
先ほどもお伝えしたように、どんな子どももストレスが溜まります。
ストレスが溜まった時は、公園で思いっきり遊んだり、好きなおもちゃで遊んだりして発散します。
大人でも、仕事のストレスが溜まったら、飲み会で愚痴を話したり、カラオケに行ったりして発散するものでしょう。
つまり、家で癇癪を起こすお子さんは、上手なストレス対処方法を知らないと言うことです。
ですから、暴力・暴言や物を投げるなど、不適切なストレス対処をしてしまっていると言えるでしょう。
外ではいい子なのに家で癇癪が起こる理由⑤癇癪で気持ちがスッキリすると勘違いしている
5つ目の理由は、お子さんが癇癪で気持ちがスッキリしたと勘違いしていることです。
癇癪が起きた結果、どうなったのか?をよく振り返っていただきたいのですが、
もしかしてお子さんの願望が叶ってしまっていませんか?
お菓子が欲しいと癇癪した場合、お菓子をもらったり、ゲームで遊べるようなったりすると、気持ちが少し晴れてスッキリしている様子はないでしょうか?
これを、誤学習と言いますが、実際は親も子どもも余計にエネルギーを使っただけで、癇癪を起こして誰もハッピーになっていません。
癇癪を起こす以外の適切な気持ちの整理の付け方がわかっていないから、一度うまく行った癇癪(間違った方法)で自分の気持ちをスッキリさせようとしているのです。
次からは、発達障害のお子さん向けの癇癪対策を5つ紹介していきますよ!
ご自分のお子さんに合いそうな方法を探してみてください。
発達障害のお子さん向けの癇癪対策①好きなことに没頭する時間を作る
ここからは、特性のある発達障害のお子さんにも役立つ癇癪対策を5つ紹介します!
自分のお子さんの特徴や特性を思い返しながら、使えそうなものを実践してみてください。
1つ目の対策は、好きなことに没頭する時間を作ることです。
家の外で何かしらのストレスを抱えてきたとしても、好きなことをすることでストレス解消が期待できます。
大人でも、会社で嫌なことがあれば、カラオケで大声を出したり、誰かと飲み会をして愚痴を言ったりして、ストレスを発散しますよね?
同じように、お子さんにも、家から帰ってきたら体をたくさん動かしたり、ゲームをしたり、ストレスを発散する時間を作りましょう。
お子さんと、どんな好きなことをして遊ぶ時間を作るのか、よく相談してくださいね!
発達障害のお子さん向けの癇癪対策②体をふんだんに使った遊びを積極的に行う
2つ目の対策は、体をふんだんに使った遊びを積極的に行うことです。
体を使う遊びは、ストレス発散だけではなく、気持ちをコントロールする自律神経の成長を促します。
特に、平均台やトランポリンなどバランス感覚を使うような遊びは、前庭感覚を司る前庭ー自律神経の発達しやすいと言われています。
自律神経を育てることで、結果的に情緒が安定し、些細なことでイライラしたり、急にキレたりすることが少なくなるでしょう。
体をふんだんに使った遊びは、こちらの記事が参考になります。
こちらの本は、感覚統合の考え方で、遊びを詳しく学びたい方におすすめです。すごくわかりやすいですよ!
発達障害のお子さん向けの癇癪対策③家の外であったことを話せる雰囲気を作る
3つ目の対策は、家の外であったことを家庭で話せる雰囲気を作ることです。
外でどれだけ嫌な思いをしたとしても、家庭で今日のできごとを報告することは、当たり前なようでとっても大事。
我慢してきたことに対して、「頑張ったね〜」と慰めてもらえると、大人でも気持ちがスッキリします。
そのため、子どもがいつでも親に相談できる関係性を作っておくことが一番重要であると言えるでしょう。
親が叱ってばっかり、いつも忙しそうにしていると、子どもは学校での出来事を報告したいと思いません。
だから、親子関係、さらには夫婦関係が大切ですね!
それと、学校での出来事を何も話さないお子さんもいるので、手間がかからないようで実はかなり厄介…。
嫌な出来事を溜め込むので、次の日いきなり不登校になったりします。
だからこそ、普段から親子が話し合える雰囲気を作っておくことが大切です。
発達障害のお子さん向けの癇癪対策④ストレスになることを減らす
4つ目の対策は、ストレスになることを減らすことです。
3つ目に紹介した「家の外であったことを話せる雰囲気を作る」が前提で、家の外で何を我慢してそんなにストレスを抱えているのか?
そのストレスの元凶を把握しておくことが大切です。
例えば、先生の注意の仕方が怖くて、学校生活をものすごく我慢しているのであれば、もう少し優しい伝え方で注意するようにお願いすると良いでしょう。
外で我慢することが少なくなれば、家の中でストレスを爆発させることも少なくなります。
うちでの実情を話すと、「学校ではいい子ですよ。学校で癇癪が起きないで、家で起きているということは、しつけの問題ですね。」と相手にしてくれない担任の先生もいます。
まともに相手にしてもらえない時は、子どもから学校での様子をよく聞いて、具体的に子どもが困った場面(例:何月何日、何時間目で、〇〇先生の△△な言い方で□□な気持ちになった)を伝えると、対応してもらえることが多いです。
ここまでやってもダメなら、担任ではなく、学年主任、それでもダメなら教頭、校長、教育委員会など上の立場の方に相談してみてください。
発達障害のお子さん向けの癇癪対策⑤語彙力を増やす
5つ目の対策は、語彙力を増やすことです。
特に発達障害のお子さん(知的障害や自閉症など)は、語彙力が乏しくて、自分の気持ちをきちんと伝えることができない傾向にあります。
例えば、学校で嫌な出来事があったとして、その状況を親に順序立てて説明し、どう思ったのかを言葉で表現できないお子さんがいたとします。
そのように、気持ちを言葉で表現できない子どもは、どのように表現するかといえば、大声や奇声を上げたり、物に当たったりなど、直接的な行動をしてしまうのです。
自分の気持ちを表現できるようになるには、家庭か療育施設(クリニックや放課後等デイサービス)で、ソーシャルスキルトレーニング(SST)を実施することが定番です。
「癇癪を起こせば、自分の気持ちがスッキリする」と間違った認識で定着しないように、早めに取り組んでおきましょう。
ソーシャルスキルとは、「自分の気持ちを相手に伝える」「謝る」「お礼を言う」「挨拶する」といった、対人関係を築く上でベースとなる基本的な力のことです。
お子さんのソーシャルスキルに不安がある方は、一冊は手元に置いて、勉強しておきましょう!
発達障害じゃなくても、子どもの情緒が安定するには親子関係が大切
お子さんが発達障害であってもなくても、子どもの情緒が安定するには、親と子どもでしっかりと愛着形成されている必要があると言われています。
愛着とは、特定の人(主に、親)との情緒的な絆のことを指します!
愛着を形成する要素の一つに、安全基地というものがありますが、安全基地とは要は自分のことを一番に受け止めてくれる存在のことを言います。
つまり、学校でどんなに我慢して悔しい、悲しいことがあっても、お母さんに言えば、絶対に慰めてくれる。
嬉しいことがあったら、お父さんに言えば、同じようなレベルで喜んでくれる。
このような、子どもが安心・安全と感じることができる家庭が出来上がっていることが、子どもの情緒の安定にはとても重要なことなのです。
私の経験では、親子関係も大切ですが、夫婦関係がもっと大切です。
夫婦仲が悪い、夫婦で意思疎通していない、こんな感じだと、子どもへの関わりに限界が来ます。
正直、私だけが頑張っても、辛いです。
だから、夫婦が深いレベルでお互いを助け合い、一緒に子どもを育てる共通認識が大切だと思っています。
愛着に課題があることで、発達障害のような症状を見せる子どもが増えてきています。
自分の子どもが発達障害かも?を疑うのと同時に、愛着に課題があるのでは?と思う視点も重要な時代になってきています。
愛着のことを詳しく勉強したい方に、おすすめの一冊を紹介しておきます。
愛着の理解が深まるわかりやすい良書です!
まとめ:なぜ、家で癇癪を起こすのか?その原因を探ることが一番大切!
ここまで紹介した、外ではいい子なのに家で癇癪を起こす理由と対策は以下の通りです。
- 注意されることが多い
- ストレス耐性が弱い
- 自分の気持ちをうまく表現できない
- ストレスの対処方法を知らない
- 癇癪で気持ちがスッキリすると勘違いしている
- 好きなことに没頭する時間を作る
- 体をふんだんに使った遊びを積極的に行う
- 家の外であったことを話せる雰囲気を作る
- ストレスになることを減らす
- 語彙力を増やす
自分のお子さんの状況と照らし合わせながら、癇癪への対策を考える際に役立ててください。
ただし、一番重要なのは、ここに書いてる対策を鵜呑みにするのではなく、
なぜ、癇癪を起こしているのか?その原因を明らかにすることです。
原因がわからなければ、対策だけやっても焼け石に水です。
お子さんとよく向き合って話を聞いてあげたり、学校の先生や周りの人にうちの子の様子を聞いてみたり、する努力を怠らないでくださいね。
また、何か育児に関する本を読んで勉強するのも、とても素晴らしいことだと思います!
子どもはほっとおけば勝手に育つものではありません。
いろんな考えを知った上で、親の都合よりも、子どもにとって何が幸せなのかを考えて、関わってみてくださいね!